恋して、チェリー
「……恭一くん」
ソファーに座っている恭一くんの膝の上に跨る。
「……」
顔色ひとつ変えない彼に、無償に悔しくなる。
「キスして?」
たくさん甘えたい気持ちに拍車がかかる。
あたしをもっともっと、甘やかして――。
ココの真似をして、恭一くんの白い肌に触れる。
きめ細かい肌から、首筋に鎖骨と指を滑らせていった。
“あたしから”じゃなく恭一くんからキスして欲しいの。
口には出さず、目でお願いする。
ぶつかり合った視線を、少し逸らした時。
視界の角に、彼の手が見えた。
……あ、これはキスするサイン?
「いだだ……!」
意地悪な指先は、あたしの唇を一瞬だけなぞった後
ほっぺをつねったんだ。
「調子に乗んな」
あたしが恋した王子サマは、どこまでもツワモノだった。
あたしの恋愛マニュアルには、ないタイプの。
発火した導火線が、その先にあるハートを目指して勢いよく燃えていった。