恋して、チェリー


彼を玄関まで見送った数分後。


後ろから近付く足音に、あたしは思わずビクリと肩を震わせた。



「ねぇね」

そう言って、あたしの部屋着のハーフパンツをクイクイ引っ張る。

振り返るとそこに立っていたのはやっぱりココだったのだ。



「恭くんココにちょうだ「ダメ」

そんなに可愛く見つめたって恭一くんは許しても、あたしは許さないよ?


「ほら、髪拭いて」

くるんとカールした黒髪から、水滴が落ちてくる。

ココを抱き上げると、リビングへと戻った。



「いいもんココ、今度お風呂に入るもーん」

しばらく恭一くんを家には連れて来れないなって、ココには悪いけどそう思ってしまう。


こんなお姉ちゃんを許して……!


「そんな目で見てもダメ」

なんて言葉で一括された。


――ったく、
誰のせいでこんな子に育っちゃったんだろう。



「ハル、髪乾かして?」
「あいよ」


ナナの方は、まだまだお兄ちゃん離れ出来ていないみたい。

恭一くんLOVEだけど、そのメーターは“お兄ちゃん”の枠を越えない。


ハルに髪を乾かしてもらって、気持ちよさそうに目を細めるナナを見ながら、ふと思った。


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