恋して、チェリー
時間も書かれていないから、今から行ってみようか?
朝は、ココとナナの面倒を見つつ自分の支度をする為、登校時間がギリギリなんだけど。
メイクの時間は、自分のプライドにかけて譲れないから、若干早起きなんだ。
「受けて立ってやろうじゃないの」
正々堂々の勝負は、好きよ。
マンガチックな妄想を繰り広げたあたしは、体育館裏へと急いだ。
この手紙は勝手に、
王子を想う女の子達からの挑戦と受け取って――……。
「ってか、もう時間……っ」
カバンからケータイを取り出さなくても、予鈴で分かった。
あと5分で始まっちゃう!
息を切らしながら、ガラガラと軋む倉庫の重たいドアを開けた。
「来たよっ!」
勢いよく入ると、中は予想していたよりも薄暗い。
おまけにこの季節じゃしょうがないけど、湿っぽくて埃っぽくて
何より……器具臭い。
シーン……と静まり返る部屋の中で目が暗闇に慣れた頃。
「あれ、? 誰も……いない」
なんだか拍子抜けした気分。
あれは、単なるイタズラだったのかなぁ……。
時間は書かれていなかったけど、もしかしたら――朝じゃなかったのかもしれない。