恋して、チェリー


妄想の中で女探偵になりきっていたあたしは


「事件に進展なし、か」

と、またおちゃらけた言葉をぽろり。

変にしょげる気持ちを抱えて、倉庫を後にした。


全速力で走っている途中、どこからか視線を感じた気がしたんだけど。


チャイムが鳴っちゃってたし、あたしは振り返らなかったんだ。






「どうしたの?」

授業中、比奈がこっそりと話しかけてくる。


「うん、ちょっとね」

解決していないモノは話さない派のあたし。


あの後、1分遅れで教室にたどり着いたあたしはこっぴどく怒られた。

遅刻は0ではなかったけど、最近は地味に間に合ってたから……。


しかも、体育館倉庫から昇降口へと走り

最後のラストスパートへと加速する前に立ちふさがるのは――



「階段キツいよ……っ」

「あはっ、オジサン発言」


3階分の階段は、やっぱりキツいんだ。



「今日中には解決するかもしれないから」

「了解っ」

ペンの先のハートの飾りを少し持ち上げて、ウインクしてくれた。



お昼にも、行ってみようかなぁ。


本当にイタズラだったなら、無駄足なんだけど。

妙に気になるあの手紙。


もっと気になるのは、ふと背中に感じた視線だった。


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