恋して、チェリー


「ふーん……」

興味なさそうな声が微かに聞こえる。


女の子に取り囲まれても、感情ひとつ出さないような声。


あたしといる時は、もっと表情が豊かっていうか。


……たくさん喋ってくれるっていうか。


少しずつだけど変化を遂げる彼。

“あたしだけに見せる顔”

それは、彼女の特権なんだ。



なんだかちょっぴり嬉しくなってここにいるあたしに気が付いてくれない寂しさを、それでカバーした。




「う……っ、湿っぽい」

体育館倉庫は相変わらず、暗い。



「っ、誰……?」

視界の隅で、黒い影が揺れた気がして急いで振り向く。


倉庫の中を唯一照らす、ひとつの窓。


外からの光で、“誰か”の影が映る。

逆光で真っ黒に塗りつぶされた影だった。


埃で白く汚れてしまった窓は、人物を鮮明に映すのを拒む。



え……、何……?

あたしが探偵ぶったりしたから?

それとも本当に何かの事件だったり?


長い影、風が吹いたのか髪らしき長いものがふわりと揺れる。



女の子……?

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