恋して、チェリー
「恭一くんの手、いつも冷たいね」
「――冷え性なんじゃない?」
今はこうして、なんとか返事を返してくれるけどあたしがアタックし始めた時はヒドかった……。
◇ * ◇
その日は珍しく、電車に乗る直前でケータイを忘れたことに気付いたあたし。
今の時代、ケータイがなきゃ生きていけない女の子が急増中。
もちろんあたしもその中のひとりで。
「学校、戻ってくる!」
「えぇ!?」
急に何を言い出すんだ、と言わんばかりの顔をしたキナ。
声に出さなくても、表情で何を言いたいか分かるようなったのは
小さい頃からの親友、あたしの特権な訳で。
「もう遅いよ?」
キレイに描かれた茶色い眉を下げる比奈。
ばっちりデコられたピンク色のケータイを優雅に開き、時間を確認している。
「ダ、ダメ……ケータイがなきゃ……」
「「生きていけない」」
人差し指と親指を立てて、ピストルの形を作る。
それをこちらに向け、見事にあたしの言葉の続きを代弁してくれたふたり。
その日はふたりともデートの誘いがなかったようで、フリーだったんだ。
久しぶりに3人揃ったあたしたちは、カラオケに買い物、クレープ屋さんへと遊び歩いていた。