恋して、チェリー

‐‐シンデレラ・ガール



「――…ねぇね、」

「……―――お……お…い!」



「んぁ……?」

「どうしたんだよ?」

今日もパパとママは帰りが遅いらしくて、兄弟だけでテーブルを囲っていた。



ココとハルに呼ばれて、ハッと気が付く。

あたし……どれくらいぼぉーっとしてたんだろ。



「さっきからブツブツいってっけど」

お皿に置かれたフォークがカランと乾いた音を鳴らした。

コップの麦茶を喉に流し込むハルは、あたしを見上げた。



「ちょっと、ね……」

そんなことを言いながら、帰りのあの場面を頭の中で何度も再生していた。


巻き戻しては、再生し、また巻き戻して――…。




――『……』

カードを見つめる彼の瞳は、付き合い始めた頃と同じ色。


……ううん、付き合う前の色だ。




――『知ってるの?』

そう聞いたあたしに、彼は何も答えてはくれなかった。

その後も会話をすることはなく、あたしのことも送ってくれなかった。


今は、
そんなことが問題なんじゃない。


あの香りと、王子の繋がり。

あの女の子……との、繋がり。


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