恋して、チェリー
やっと噛み合った、ふたつの歯車なのに。
闇に隠れてて、見落としていたんだ。
“彼”の歯車には、もうひとつ歯車が噛み合っていたことを。
言いようのない不安に呑み込まれそうになりながら、布団の中でぎゅうっときつく目を閉じた。
あんまり気にしてなかった。
転校生が来るって話。
「今日らしいよ」
「その話で持ちきり」
クラスの皆は、なんだかソワソワ落ち着かない様子だった。
それこそ、可愛い子がいいとか、カッコいい男の子だとか。
今のあたしには、別にどうでもよかった。
そんなことよりも、微妙にぎくしゃくしてしまった彼との関係。
――その方が、大問題なのだ。
ふと、恭一くんに会いたくなって
転校生の話で盛り上がっている、キナと比奈に一言告げて。
あたしは彼の教室へと行ってみることにした。