恋して、チェリー
「あたしも戻るよ?」
しょうがないなぁ、と顔ににじみ出ているキナと
「ちぇりひとりじゃ危ないしねっ」
放課後の学校を想像し、なぜかルンルンの比奈。
ここはひとつ、ふたりに甘えてみようと思ったんだけど。
「大丈夫、大丈夫っ!」
――もう遅いし、ふたりとも帰りなよ!
あたしひとりで本当に大丈夫だから!
と、念を押してみる。
「新しい恋、ゲットするチャンスと考えてっ」
放課後の学校で、あたしは身震いする程の恐怖と引き換えに、新しい恋にオチることになる。
「でた、超前向き思考」
カバンを肩にかけ直すキナは、ため息と共に呆れ顔。
「これは暴走の前触れかも」
ニヤリ、と大きな瞳に私を映す比奈。
「てか、もう暴走してるから」
「あはっ」
こんなふたりを手を目一杯振り見送った後、あたしは早足で学校へと急いだんだ。
教室に差し込む光は、オレンジ色を通り越して、薄暗いブルーへと変わっていて。
なんだか奇妙に思えてきたあたしは、自分の教室へとひた走る。
「えぇ~と、……?」
机の中に手を突っ込んでガサゴソやるうち、手に当たる冷たくて固い感触。
「あった~…っ!」
あたしのは、白のスライド式の携帯でガラス性のサンキャッチャーをストラップとして付けている。