恋して、チェリー


その前に、あたし達の先輩たちは王子が彼女を作って来なかったのを間近で見てきた訳だから。



……あれ、?

じゃあ王子の“中学生時代”は?


恭一くんと同中だった人は、これを知っているんじゃないか。

でも事実、その話は出回っていない。



アキ先輩なら、何か知っているかもしれない。

恭一くんは、今は――自分の過去を話そうとしてくれない。


無理に聞き出す気はないし、


いつかあたしに話してくれると、信じて。


今は触れないでおこうと思った。




トイレに寄った帰り道、下の階から登ってきたアキ先輩とばったり遭遇した。



「おっ、タイミングいいね~」

いつもの笑顔でフニャリと笑う。


あたしも先輩に、恭一くんのことを聞こうと思ってたから

こんなベストなタイミングってない。



非常階段に移動したあたし達は、さっそく本題へと入った。



「と、その前に」

「胡桃ちゃんなら来てないよ」

あたしが聞きたいことを言わずとも、サラッと答えてくれる。


いつもヘラヘラチャラいように見えて相手に絶対、隙を見せない。

本当、謎の多い変な先輩だ。


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