恋して、チェリー
中学に入って、2年生になった頃だ。
やたらと大人びた黒髪のアイツと友達になった。
瞳の色は、黒でもなく茶色程薄くもない。
ショコラ色といったところ。
肌は女みたいに白くて、いかにも女ウケがいい顔立ちだった。
「おはよ~」
「……はよ」
あの頃のアイツは、ぶっきらぼうながらもはにかんだ笑顔でクラスメイトの挨拶に答える。
今程、近寄りがたい雰囲気はなかった。
ギャアギャアうるせぇギャルみたいな奴らは除いたとして。
「今日何回目よ?」
「4回。放課後の呼び出しが2人入ってる」
「……はっ、モテ過ぎだろ」
鼻で笑ってみたが、女の子大好きなオレは正直うらやましかったりする。
自分に好意を持ってくれたのだから、相手を傷付けられないと
告白の呼び出しには、素直に応じていた。
――『ごめん、無理だから』
告白の雰囲気を敏感に感じ取ってはスパッと潔く切ってしまう今とは大違いだ。
“自分に好意がある”それが分かった瞬間牙をむくようになったのは。
あの女と、アイツに何も言ってやれなかったオレにも問題がある。