恋して、チェリー
これは、あたしたち3人色違いで合わせた大切なもので
太陽の光にかざすと、その光を透過して部屋一面に光のシャワーが降り注ぐというモノ。
あたしは、夏をイメージした夜空に輝くどこか懐かしさを感じる花火の色と、琥珀の月。
キナは、冬をイメージした一面に輝く雪の色と、銀色に照らす冬の太陽。
比奈は、春をイメージした明け方の優しい空の色と、キラリと光を放つ星。
「――も、遅いかぁ」
窓の方にケータイを掲げてみたけど、いつものように壁に映る色はない。
白い壁は、白い壁のまま。
教室の窓から見える街が、薄暗いブルーから、濃い色へと呑まれていく。
これは完全に暗くなる前に帰らないとヤバい、と思った時だった。
……シン、と不気味な程静まり返る廊下。
「――ひぃっ、!」
不意に耳に付くのは、ふたつの足音。
びっくりしたあたしは、間抜けな声と共に、見事にイスから転げ落ちた。
痛たた……、とお尻をさすりながら立ち上がろうとすると教室の開けっ放しのドアから見える――
ふたつの長い影。
もう、こんなに遅い時間なのに誰かいるの……?
それとも、お、おば……
「きゃ……ッ!?」
教室のドアのふちにニョッと伸びた大きな手。
頭を抱え込み、その場にへたり込んだあたしはさそがしおバカに見えただろう。
「あれ~?」
「こんな時間に何やってんの?」
その声は、いつの間にかあたしのすぐそばまで近付いていたんだ。