恋して、チェリー
なんだか無性にカラオケで歌い倒したくなって。
「カラオケ」
「そう思った」
唇の端を僅かに上げて、流し目でオレを見る様は。
コイツのモテる理由が、今なんとなく分かった気がする。
どんな小さな仕草や動作でも、他のヤツと何かが違う。
どこか、カッコいいというかセクシーというか。
コイツはサラリと無意識にやっている。
これを、女共は見てるのか。
「おい、もうやめろよ」
隣で呆れた声でオレを静止しようとするの恭一を振り払い、ぶっ通し4時間歌いまくった。
「喉いてぇ~……」
8時を過ぎた頃、やっとカラオケを後にした。
「歌いすぎだっての」
相当疲れたのか、その背中は憂いが帯びていた。
コイツの2、3歩後ろを、まだ少し明るい空を見上げたまま歩く。
その、数秒後。
「ってぇ……っ!」
急に立ち止まった背中に、オレは鼻を強打。
涙が滲むのをこらえながら、鼻を押さえて、ソイツの前に足を踏み出した時。
「おい……っ」
恭一が、途端に走り出した。