恋して、チェリー


「早く、こっち……っ」

反射でコイツの背中を追った。


裏路地に入り、ひとりの女の子の手を取って走り始めたんだ。



それが、胡桃とコイツの出会い。


そのまま3人で、公園を目指してひたすら走った。



「待、って……!」

女の扱いに慣れていない恭一は、胡桃のペースを無視して、がむしゃらに走った為に。


息が上がった胡桃は、途中で立ち止まってしまった。



そこは、不器用だな。



「――ああ、ごめん」

「ってか、どうしたんだよ?」

相変わらず、肩で息をしている胡桃の手をしっかり握って、やっと今コイツの状態に気が付いた。



「絡まれてたから」

「は?」

「ケガない?」

「大丈夫……」

ちょうど恭一の背中で視界が遮られてたから分からなかったけど。


この女は、どうやら男に絡まれてたらしかった。


って、コイツオレを無視しやがった。


< 94 / 202 >

この作品をシェア

pagetop