恋して、チェリー


「……おい」

ついでに、オレが呼びかけても気が付かない。


心ここにあらず、って感じでひたすら空を見つめていた。



……まぁ、コイツがそうなった理由は分からなくもないけど。



「惚れたろ」

「……っ!」


――うわぁ、なんて分かりやすいリアクション。

散々周りの景色さえも見えていなかったヤツが、たったこの言葉だけで振り向いたんだ。


……もう確定、だろ。




「学校中に知れたらどうなるんだろうな」

ほんの少しの脅しのつもりで、そんなことを口走った。

が、それは効果テキメン過ぎた。


顔を机に突っ伏し、……どんよりとしたオーラを撒き散らし始めたのだ。



「わ、悪かったよ!」

きっとコイツも、それを分かっているんだろう。


今まで散々告白を断って来た男に好きなヤツが出来たと知れたら。


きっと、今まで通りには行かないことが分かっているんだろう。


自分は元より、彼女が非難されるかもしれない。



女の妬みや恨みが1番怖いってのを、“オレの隣にいた”コイツはよく知ってる。


オレは女の子大好きな、こういう性格だから。


何度コイツの前で修羅場をさらしたことか。





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