雨の降る街

「君はいつも自己完結してしまう。
…君はどう思ってるの?
俺の事は考えずに、君の気持ちを教えて欲しい。」


彼は真っ直ぐに私を、私の言葉を待っている。


私は胸の中にある感情を、すぐに言葉には出来ず俯く。


「大丈夫。どんな答えでも、受け止める自信があるから。」


彼の優しい言葉に顔を上げ、


「…私は、ずっとあなたを好きでいると思う。
ただ、他の子みたいに、四六時中、一緒に居たり、一日中、メールのやり取りはしたくない。…そういうの、めんどくさいなって思う。
彼氏に依存、したくない。
自分勝手だけど、私はこういう付き合い方しか出来ない。
無理に合わせられない。」


そう言った後、理解してはもらえないだろうと思い、再び俯き、目を閉じた。


フッと彼が笑う気配がした。


「うん。わかった。それって、今まで通りでしょ?
それで俺達は上手くいってるんだから、変わらなくて良いんじゃない?」


「今日は…最後に思い出作りたいから、誘ったんでしょう?」


彼の言葉が信じられず、微笑む彼を見つめて、そう告げる。


「俺達はあまり一緒に出掛けたりしないだろう?
だから、たまには出掛けて、学生の時の思い出作りたいなぁと思っただけなんだ。
数年後、二人で学生時代の思い出話なんか、出来たら楽しそうだからね。」


目を細め、ポンポンと私の頭に手を乗せる。



彼は別れるどころか、数年後の私とも一緒に居てくれるつもりらしい。

それが嬉しくて、頬が緩む。


「時々は、こうやって、思ってる事をちゃんと話してくれるといい。
君は自分の中に、溜め込んでしまうから。」


と、言うと彼は私の顔に片手を添えて、一瞬だけキスをした。





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