雨の降る街
駅には、待ち合わせ時間の30分前に着いた。
コーヒーでも飲んで時間を潰そうと、駅ビルに入っているカフェへ入る。
ここなら、ガラス張りで待ち合わせ場所も見えるから、彼が来たら、すぐに分かる。
コーヒーを飲みながら、昨日、彼が穏やかに微笑みながら言った言葉を思い出す。
「あさって、暇なら映画でも見に行かない?…思い出、増やしたいんだ」
最後に別れる女との思い出を作りたいという事だろう。
良い彼女とは言えなかったのは分かってるから、最後くらい、彼の望みを叶えようと思った。