雨の降る街

公園のベンチに腰掛ける。

手には、公園に入る前に自販機で買ったジュース。


「俺、久々に全力疾走したよ。ふぅ…でも、すぐバテて、ダメだなー。」


「ふふ…早かったよ。あっという間だった。」



ふと、彼と目が合う。


一瞬の間を置いて、彼が口を開く。


「あのさ、…実は、「分かってる。大丈夫だよ。今日は楽しかった。今までありがとう。」


彼の言葉を遮る。
何だか、彼からは別れの言葉を聞きたくなかった。

だから、俯いて目を合わせず、早口で簡潔に言った。


今までは、相手が別れを告げるまで待っていたのに、待てなかった。

心の準備は出来ていた…つもりなのに。


思ったより、今回は辛いかもしれない。



「今日で最後って?つまり別れたいって事?」

いつも穏やかな彼には似合わない、低めの声に驚いて、彼の顔を見ると、呆れたような表情をしていた。


「それで…俺と別れたい理由は何?」


そんなもの、ない。

そもそも、自分が別れたいと言ったのに、私を責めるのはお門違いだ。


「あなたが別れたいって言ったから…でしょう?」


「いつ?…俺が別れたいって言った事あった?」


直接的には言ってはいないけれど、おととい、そういうニュアンスで誘ってきたのに。

私は彼の考えが分からず、黙ったまま、頭の中でグルグル思考を巡らせる。



< 9 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop