クリヴァル


ランプの油が切れかかり、皆の顔が陰る。

カロンがゴソゴソと布袋から丸い鉱石を取り出し、机の上にトンと置いた。

小さな手のひらをかざすとランプの明かりよりも安定した光が、部屋を照らし出した。


「……我々にも分かるように説明してもらおうか」


ボルグが問いかけにストークが頷く。


「この病にかかる前にみんな同じ夢をみてる」


「夢?」


カノーが身を乗り出す。


「1人、暗い洞窟の中にいる夢……すると突然生き物の気配を感じ、押し倒され首を絞められる」


青年が目を閉じる。


「…そこで初めて相手の顔が見える―――黒鉄の鎧を着た人間…」


「黒鉄の…?」


――――――――それは…まるで


「…まるで死神(我々)のような――」


誰ともなく呟いた。

青年は再度頷く。


「…これは、病気ではなく―――――死神による呪詛」


わずかな間、静寂が訪れた。


黒鉄とは、特別な金属である。

通常の鉄と比べ値がはるのもそれだが、何よりは死神が人として生きる為には欠かせぬ金属。

『生命力を吸収する力』を一切遮断する金属である。


死神が傷つけば、周りの草花は枯れ、傷つけた相手は地に倒れる。

――代わりに癒える死神の傷。

無差別に人の命を喰らわぬ為に死神はその金属を身につける。

上等な品だと、鎧として纏わずとも腕輪などの装飾品でも役目を果たすが、黒鉄の鎧は死神のシンボルとして周知されていた。


「対象を特定せずに呪いをかけるには、媒体が必要…」


カロンが視線を下げたまま呟いた。


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