クリヴァル
「『夢』を介して呪いをかけたという訳か…確かに魔力に優れている者なら……死神になら、可能なのかもしれん」


唸るのはボルグ。

魔導とは無縁の剣士であるが、長く生きている分それなりの知識はあった。


「…呪詛に必要なものは、魔導と同じ精神力、そして……憎しみ、だな」


想いの強さが、呪いを強くする。


「そうだな、…カロンくらいの常人より突出した魔力、あとはこの国への強い憎しみがあれば……」


引き合いに出されたカロンに、カノーがチラリと視線を移す。


「な、なんですか…その目」


「腹黒いカロちゃんなら、いつかやりかねないわねぇん」


「カノーさん…どんな目で僕を見ているんですか」


じと目のカロンをよそめにカノーが切り出した。


「まぁ、まだ可能性の一つ。死神でなくとも、複数犯となれば可能かもしれないし…ただ普通の伝染病じゃないってのは確かと思う」


「もし呪詛だったとして?皆に夢を見ないように、『寝るな』と呼びかけるのん?」


そんなの無理よ、とカノーが肩をすくめて見せた。


「一番は呪詛の圏外へ…この区画から離れてもらうのが良いんだけど、完全に隔離されていて簡単に移動なんてできるもんじゃない…範囲は広がっていく可能性もあるし」


うーんと唸ったあと、紹介したい人がいると言ってストークはいったん話を置いた。


「ちょっと待ってて。俺1人じゃできなかったこと、皆が一緒ならできるから……今回の事件に関して協力してくれている人がいるんだ、その人を連れてくる。

 2時間ほどで戻れると思うから、くれぐれも寝ないように――夢をみないようにしてて」


バタンとドアが閉められ、3人が取り残される。


「………相変わらず、一方的なやつだ」


ボルグの呟きが静寂に吸い込まれていく。


「…でも嬉しそうでしたね」


ぽつりぽつり死神たちが口を開く。


「やっと動けるってことなんでしょ」


カノーは髪をかき上げた。


「…カノーさんも嬉しそう」


「本来の任務よりは……楽しそうになってきたからねぇん」


カノーは不敵な笑みをつくってみせた。

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