クリヴァル
長年生きた自分でも、生体エネルギーの減少で姿が変わってしまったという事例は聞いたことがない。

真相はまだ謎のまま、ジェイドの話だけを鵜呑みにすることはできない。

だが、胸の内に想いを秘めていようとも、この男がなんとなく善人の部類であるということは感じ取っていた。

その理由は言わずもがな、自らのツレに似たようなタイプがいたからだ。


「? なんだよ兄貴、ジロジロみて」


「いや、身体は大丈夫か?」


「大丈夫にきまってる、心配性だなぁ兄貴は」


ストークはえへへへと、笑ってみせた。


「とりあえずトレディアがあった鉱山へ行ってみよう、弟さんの波動を負えるかもしれない」


「波動?アンタ、魔力を?」


「ストークさんは風を操ります、ある程度近くに行けば弟さんの息遣いをストークさんには感じとれます」


ほうっと、ジェイドは息をついた。

魔術を操る者は少なくないが、そのほどんどが魔導具に頼っての技がほとんど。

カロンの持つ魔鉱石のように魔力を込めると発光するものや、かざした方向に炎を生みだすロッド。

文明の利器とも言える魔導具は多数生みだされていたが、未だ戦争の主流は剣と槍。

それもそのはず、その魔力の威力は使う者の才覚に左右される。血に流れる魔力の強さ、精神力。

魔術を操る部隊も各国にあったが、武力と言える程の魔力を使いこなせる者は多くない。

中でも生まれつき特に魔力の強い者には、火・土・水・風のいずれかの4大精霊が宿る。

4精霊が宿る人材はそれだけで神官クラスの職が約束されていた。


「すごいな、神官クラスの魔道士さまか。」


「あは、俺のは特技みたいなもんだよ。カロンは母国でホントに神官の位も持ってる」


カロン以外は魔道よりも武道に長けていたが、元々潜在能力の高い彼らはそれでも凡人以上は至極当然。

一国の主が喉から手が出る程に欲しがる人材が、この臭気漂う死の街に闇に溶け込むように在った。

圧倒的な存在感を見せつける死神たちにジェイドがどこか遠い目をして言った。

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