クリヴァル
「…アンタらに期待をしていいんだな、ホントに。…手詰まりだったんだ、嬉しいよ」


「何?今さら。可愛いところもあるじゃない」


「オニキスがこの現状を作りだしているなら、それを止めてやりたい。改めてよろしく頼む」


ジェイドが深く頭を下げた。

―――――――――

鉱山までの道中、カロンが尋ねた。


「なぜ国に認められた死神である貴方が、…貧民街に家を借りているのです?」


「この国では死神に生まれついた者は、名を捨てて大統領直属の特殊部隊に入るらしい」


皮肉げに笑ってみせるジェイド。


「俺には唯一の家族を切り離すことはできなかった、そういうことだ」


「………」


「はっ、そんな顔すんな。あの家の居心地は悪くない。それに自分だけいい暮らしってのは性に合わないのさ」


眼前に鉱山の入り口が見えた。


「そら、ついた。坑道を案内しよう」


今回の騒ぎで鉱山に入る者はいないのだろう、入り口にはつるはしやシャベルなどが投げ出してあった。

静けさを纏う、暗闇の中に足を踏み入れる。

先頭をランプを持ったジェイド、最後尾をカロン。

小さな2人が明かり係となり、しばらく無言で歩いた。


「――――――ここだ、この奥にトレディアがあった」


空気が重苦しいのは、暗闇のせいか…。
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