クリヴァル

天井が崩れて先に進めない。道は完全に塞がれ、掘り出そうにも他が崩れないように細心の注意を払う必要があった。

      ・・・
「じゃあ、聞いてみるな」


スッとストークが前に出た。


「おい、魔力を使うみたいだが、こんな狭いとこで危険は――」


「しーッ!静かに、もう集中してる」


口を開くジェイドをカノーが制す。


「え…」


閉ざされた空間に吹くはずのない風がそよぐ。

ストークの身体が、淡い緑に、光る。

さっきまでの気のいい青年はそこには居なかった。

そよ風に身を預け、光に包まれる青年はどこか中性的な美しさを纏わせていた。

暗闇の中の、圧迫された空気はそこにはない。

ただ穏やかで心地よい空間が広がっていく。

『死神』と誰が呼ぶだろう、…いや美しいからこそ死への案内人として相応しいのか?

そんなことをふと考える。


「………!」


ストークが僅かに顎をのけ反らせ、目を見開く。

風が止まり、闇が再来する。


「ストークちゃん?!」


青年は煙でも吸ったかのように、ひゅーひゅーと苦しげに喉を鳴らし、白い首筋に汗の玉が浮かべて膝をつく。


「……っ…」


ストークは大丈夫という風に片手を上げてみせた。


「……聞こえた、けど…っ」


けほけほと軽く咳込む。

        ・・・・・
「……途中で、はじかれた…っ」


はじかれた…?顔を見合わせるカノーとボルグ。


「大丈夫かい?」


何が起こったか分からないジェイドに、ストークの背中をさするカロン。


「……とりあえず、出るぞ」


巨体が動いて、うずくまる青年をその肩に担ぎあげた。


「まったく…役に立たんことこの上ない」


「悪ぃ兄貴…」



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