クリヴァル
「弟さんはトレディアのほとんどの魔力をつぎ込んで結界を張っているのだと思います。もしくはそういった強力な結界を作るのに適した力を持った魔鉱石なのかもしれない、…詳細は不明でしたからね」
「結界さえ破れば…敵は丸裸か」
ボルグが低くつぶやくと、カロンがうなずく。
「もしくは突破できれば、です。…破るには先の見えない代物です、突破できればある程度中では力は制限されるかもしれないですが、中の本体に行きつくことができる」
「相手の力はいかほどか分かるか?」
「結界に関しましては、…僕らだけでは太刀打ちできない。この国の神官クラスの実力者、もしくはジャド大公に救援を仰ぐことになりそうですね。
ただ申し上げた通り、これだけ強力な結界です。…ほとんどの力をつぎ込んでいると思う。中に入ることさえできれば…」
カタンッ
物音がして視線を向ければ、『仕事着』姿のストークが居た。
黒い甲冑に身を包み、大剣を背負う。
「…結界を破壊するには、時間がかかる。病にかかっている人たちには時間がない、『破壊』じゃなくて『突破』だ…」
「ストークちゃん!アンタ大丈夫なの…?」
「カロン……大公様からの命は?」
先ほどの息の乱れもない。ストークが冷えた言葉を投げた。
「…タイリース共和国の伝染病の早急な原因解明。伝染源の除去…」
・・・
「そう。早急なだ。ミアに連絡を取る、―――結界を突破する」
「…待て、お前は連れていかん」
「兄貴、二度は言わない。大公様の命令だ。大公様なら俺に行けと命ずる」
「………」
儚く、脆く見えた美しいブルーの瞳はもう重厚な冑の向こう。
青年は凛とした立ち姿で、3人の死神と対峙する。