クリヴァル
「……お、オレからも頼む。弟が今どういう状況か分からんが、この伝染病が弟の手によるものなら…一国も早く救いたい」
「ジェイド、安心していい。俺達はジャド国王直轄の訓練を積んだ『死神』。どんな化け物にも、増してや一人の『人間』に負けることなんて無い」
3人に顔を向け「そうだろ?」と促す。
「……好きにしろ」
常に眉間に皺を寄せているボルグの表情は読めない。
「ミアに連絡を取る、少し出てくるよ」
パタン…
残された3人の死神とジェイド。
カノーが腕組みをしたまま神妙な顔をしてボルグを見上げた。
「兄貴、…あのコちょっと変じゃない?せかせかしちゃって、さっきまであんなに調子悪そうだったのに、息の乱れもなくなって」
「……アイツの精神力ならば、不調をカバーすることなど容易い。」
「分かってるわよ、ただ…」
ボルグにはカノーの言わんとしていることが分かっている。ただ馬鹿弟子が必死に隠そうとしている何かを、自分が暴く訳にもいかない。
「ミアさんのことといい、ストークさんには、この国に何か縁があるんでしょうか…」
「そうそ、必死な感じがするのよ。そりゃ病人の世話してちゃ情が移るのは分かるわ、でも大公様が一番に望むのは……」
カノーが自身を抱きしめ、想いを馳せる。
「ストークちゃんの無事なのに…」
直接風の魔力で相手を探ったのはストーク自身。結界がどのようなものかも、おそらく現時点で一番良く分かっている。
その上での我を通すような行動が気になって仕方がないのだ。
「ストークが何をしようとも、我々で守ればいい。そうだなカロン?」
「…うふふ、そうでした」
カロンが可愛らしい笑みを浮かべる。
死神たちの一部始終をみていたジェイドが思い浮かべた言葉は『絆』。
一見バラバラの個性を無理矢理いっしょにしているように見える。
しかし実際の家族、兄弟であってもそうではないか。
我の強い兄に、気弱な弟。
それでも強い絆で結ばれていた、それは確か。
この死神たちに任せてみよう、俺の絆を取り戻すために。