クリヴァル
「オレか、カロン、ミアじゃないとできない…。ただ中は完全にトレディアのテリトリー。タイリースの皇太子妃さまとそんなとこへは連れていけないからな」


突破口――――それは入り口であり、出口でもある。

万が一の退路の保持、昨日今日会った女に一人で任せてよいものか…。死神たちの目がお互いに交差する。


「…私一人では皆様不安を持たれるでしょうから、これを―――」


スッと差し出されたロッド。


「単純に言えば、使用者の魔力を数倍に高めます。私でも数時間は突破口を保っていられるでしょう」


とどめ置くことのできない魔力を回復する霊薬も、高価な妙薬に至るまでもが揃えられていた。

さすがはタイリース最高の錬金術師か。


「頼もしい限りですぅ…」


カロンが羨望の眼差しでロッドを見つめている。

お金に替えることのできない至宝の品たちに、カロンは目を取られて仕方がない。

そんなカロンを大きなコブシでボルグが小突いた。


「ストーク、その女性は信用のおける人物か?カロンが残れば、カロンは何があろうと我々を見捨てることはしない。カロンとミア殿、二人で残ればいい。後は我々が中を掃除する…」

            ・・・・
「…兄貴、4人じゃなきゃ勝てない」


「何だと…?」

               
「風に乗って、結界の中心に触れた。…中心に近付く程、何も聞こえなくなっていった…」


ストークが目をゆっくりと閉じて、あの時の感覚を思い出す。


「風の勢いは徐々に弱まり、もう少しで核に触れると思った瞬間………『闇』に飲み込まれそうになった―――」

   ・・・・・                 ・・・・
そう、はじかれたんじゃない。背筋が凍って、反射的にはじいた。


「4人なら、負けない。それは兄貴も分かるだろ?」


「…怖いのか?お前が?」


「………」


青年は答えなかった。

            ・ 




















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