クリヴァル
ギュプッ ピシャッ
回転する鎌の周囲で異形のもの達が、物言わぬ屍[かばね]となっていく。
獣よりも俊敏な…、随一の攻撃力。
それが彼女の最も秀でた能力であった。
ただ大ぶりな攻撃にいくつかの隙はあるものの、なぜかその肢体に獣たちの攻撃はかすることもない。
まるで突風に煽られるようにカノ―を前に足を踏みとどめ、瞬時に両断され叫ぶ間もなくどす黒い血をまき散らしていく。
カノ―と供に行動をすることの多いカロンは、彼女のベストパートナー。
白兵戦に優れたカノ―と、後方支援、魔力による大技を得意とするカロン。
「カノ―!避けて下さいね!」
カノ―が身体を左横にずらした瞬間、マグマの様な大きな炎の塊が獣たちに散舞した。
魔力はペース配分が肝要…。
いくら強い力を持っていても、実戦で敵を前に力が尽きてしまっては、待つのは『死』のみである。
その点においてカロンはエキスパート。
ある時は最小限の魔力で敵の攻撃の軌道を反らし、隙あらば精霊魔法で一掃する。
前面の敵はカノ―が一手に引きつけ、カロンの集中を乱すことはない。
一方、ストークとボルグは背中合わせに武器を構えていた。
これが彼らの基本スタイル。
ジリジリと包囲網を縮めてくる醜犬どもを前に、大剣を構えたまま微動だにしない。
「ギャオウッ!」
一斉に飛びかかってきた獣が、彼らの『間合い[サークル]』に入った。
ジャリッ
舞踊のように見えた。
背中あわせの二人、供に右足を踏み出す。