クリヴァル
一方ストークとボルグも、決して楽な道のりではなかったが着実に歩みを進めていた。
「カノーたちも気を抜いていなければいいが」
コンビ結成の浅いカノ―・カロンとは違い、こちらには安定感と言えるものがあった。
ボルグの呟きに、ストークは答えない。
「……どうした、しゃべる気力もなくなってきたか」
「……何がだよ、兄貴」
ストークに息の乱れはない、所作に不自然なところもない。
一緒に戦線をくぐり抜けてきたパートナーだからこそ、感じる違和感。
「できるだけ体力を使わないようにしているな。そんなに辛いか」
「だから何が…――――――ッ!?」
ガシャン
ボルグがおもむろにストークの冑をはぎ取った。
意表を突かれた青年はとっさに顔をそむけた。
「…どうした、こっちを向け」
「………」
「お前が何も言わんのなら、それでいい」
しばらくの沈黙の後、ストークがボルグに顔を向けた時にはその広い背中がゆっくりと前に歩みを進めていた。
「…兄貴っ」
ピタリと歩みが止まる。
「…なんだ?」
「心配かけてゴメン、でも大丈夫だから。足は引っ張らない」
「…フン、その言葉信じるぞ」
内心あきれているのであろう、ボルグはその呟きだけを残して遠ざかる。
薄暗い坑道にはもう静けさだけが残っている。