クリヴァル



洞窟全体の淡い蒼い輝きが、少し強くなったような気がした。

分かれ道の先、中心に先に辿りついたのはカノ―達だったようだ。


「…っ!ストークちゃん!?来ちゃダメッ!!」


グラマラスな影と寄り添うような小さな影が、強い光に長く伸びた…!


「!?」


とっさにストークとボルグは大剣を盾にする。

何が起こったのかは分からない、ただ生ぬるい爆風が脇を過ぎていった。

カノーの叫び声が耳に残る…。

先ほどの余波で数メートル先の気配さえも吹き飛んでしまった。

ただ、空気の振動だけがストークたちにこの先の切迫した状況を伝えている…。


「……カロンがいる、安心しろ。あの程度の攻撃、傷など負ってはいない」


ストークの憂いた表情を読み取ったかのように、ボルグが呟く。

コクンと頷いて、ストークが地を蹴った。


「……視力はあてにならない」


予想以上に広い、爆風と同時に光を失った空間。

広がる暗闇。壁面との距離がつかめない。


―――加えて、カノ―とカロンの気配が叫び声を最期にぱったりと途絶えてしまっていた。


(トレディアの得意分野は結界…これもその一端か?)


わずかに冑の下でストークが眉間にシワをよせる。

察したかのように、ボルグがポンと肩をたたいた。


「なかなかに芸達者な相手のようだな…」


「うん…でも大丈夫。俺が『目』になる」


ストークは大剣を背中の鞘に収め、瞳を閉じる。


集中に入った瞬間、やわらかな緑色の光がストークを包み込み、暗闇にわずかな灯りがともった。

万物に宿るという、目には見えない精霊を思わせた。

フワリとそよ風に揺れる金髪が、陶器を思わせるキメ細かい白い肌が、儚い蛍のような光に包まれていく。

暗闇の中、恐れも不安もない、ただその存在だけが限りなく優しく美しい。


その美しさも、ゼウスの武人の前では意味をなさなかったが。











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