運命の糸
【真実の糸ー29】




それを見て、
慌てて永斗は声を出す。







「ちょい黒川待ち!!
死ぬで!!」







黒川は冷静に眼鏡を
クイっと上げると

落ち着かせるように
言った。







「…あのガスは
普通の人間にとっては
有毒のガスです…

ですが、
坊ちゃん達みたいな
クローン人間は
あのガスで育った為
無害なのですよ…

坊ちゃんが
学校の教室に睡眠弾を
投げ込まれて
平気だったようにね…」







…そう言えば
あの時は
5人を拘束する為
わざと眠ったように
倒れたが、

睡眠ガスは永斗に
効いてはいなかった。






改造を施された
自分の体は

強く作られているようだ







でも、
こんな堂々とガスに
向かうなんて…







「黒川………

お前もまさか……




…クローンなんか…?」







ふっと
黒川は口を微笑むと
緑色のガスの中へ
バフンと入って行った。







………







本当だ……







明らかに体に悪そうな
この煙を吸っても
体に異変はなく、

むしろ落ち着いた感覚が
永斗に感じさせていた。







それはそうだ。


これを吸って、
永斗は
生まれてきたのだから。







それにしても濃いな…









色が色だけに
辺りは何も見えく、
黒川の背さえも
濃いガスにより
見えないが

真っ直ぐ
突き進んでるのだけは
分かった。







そして
奥に行き着くと、
黒川は手を伸ばし
ドアを開けたのだった
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