【完】甘いカラダ苦いココロ

 ここで、ここで頷けば、楽になるのかな……?

 このぽっかりと空いた胸の穴を埋めることが出来る?
 翔梧も……この想いもいつか消えて、無くなって……。

 その時、山内さんの手が、私の頬に……触れた。
 びくんっ! 
 とカラダを反らす。
 あの時の山内さんの顔が忘れられない。

「……あ、ゴメン、涙が……」

 気づけば私は泣いていて、それを拭おうとしてくれたのに。

「あ……」

 言葉を失ってしまった。

「参ったな……そんな驚かなくてもいいのに」

 カウンターに両肘を乗せて、一瞬向こうを向いて髪をかき上げる。その寂しげな苦笑いは、泣いているみたいだった。

「ごめん、なさい」

 申し訳なくて、たまらず涙が溢れる。

「違う、いいんだ。泣かないで、沙耶ちゃんに泣かれたらたまんないよ」

 両手で顔を覆う私に慌ててフォローしてくれる。
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