【完】甘いカラダ苦いココロ

「名前、聞いていい?」

 席についてすぐ彼が口を開く。壁際に並んでるソファーは全部ラブソファーのような作り。座れても三人が限界だろう。必然的に隣に並ぶ。さっきからそうなんだけど、周りの音が大きくて話すときは至近距離。

 彼が近づく度私の心臓が大きな音を立てる。20センチ以上あった身長差が座って並ぶと一気に距離が縮まって話す度顔が、肩が、体が触れる。

――ち……近すぎ!
 暴れる心臓の音を大音響が隠してくれて助かった。

「沙耶(さや)」 

 平静を装って目を見て答える。 

「さや? 名前も可愛いんだな」

 笑うと幼く見える……。数センチ先の彼に目眩がした。


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