【完】甘いカラダ苦いココロ
翔梧も沈黙したまま。後ろからは表情はよく見えない。何か、何か……ただ刻々と流れていく時間。電車到着のアナウンスが響き渡る。ホームに入ってくる新幹線。
前から、横から後ろから、夏休みを謳歌しようとしてる人並みに押し込まれるように先に乗り込んで翔梧からスーツケースを受け取る。
「じゃあ……あの、ありがとう」
乗り口には二人だけ。席を探してる乗車客も、もうまばらだろう。
発車のアナウンスが聞こえた。言わなくちゃ。なにか話さなくちゃ。焦るばかりで、口から出てくるのは形にならない単語ばかり。
ふと目の前に翔梧の手が差し出される。え、握手……?
翔梧の意外な行動に、反射的にその手を取る。発車のベルが鳴り響いた。我に返り、翔梧を見つめた。やだ。まだ何も伝えてない……!やっと会えたのに。