【完】甘いカラダ苦いココロ
もう、二度と見られない。そう思っていた彼の寝顔が、すぐそこにある。二人の間にあるひじ掛けには翔梧の腕。触れそうで触れられないそこからさっき抱き締められた時と同じ体温を感じる。
今日、翔梧に会ってから、休むことなく激しく上下する感情。それと数日間の寝不足も重なり、彼の寝息に誘われて目を閉じる。瞼の裏がじんわりと気持ちいい……そのまま眠りに落ちていった。
うつらうつらして目を覚ます。ここ、どこだっけ?
新幹線の中、私は目を覚ます。次が降りる駅だった。
――乗りすぎなくてよかった。
新幹線で乗り越したら大変だ。一人で目を覚ませたことに安堵した。隣の席を見る。誰も座ってはいない。
――だよね。
そんなこと、あるわけない。翔梧が私を追ってくるなんて……。でも、いい夢だった。あんまり会いたくて、夢にまで見るなんて中学生以来で一人恥ずかしくなって笑う。
あんなにリアルに見るなんて。でも……いい夢だったな。頬に伝う涙を感じた。