【完】甘いカラダ苦いココロ
まるで、あの夜の再現のようだ。握り合う手のひらに違う汗が混じる。
「出れば?」
鳴り続ける着信音の中携帯を見つめる私に怪訝な顔をする翔梧。
「う、うん」
迷いながら通話ボタンを押す。
『沙耶ちゃん? 無事着いた?』
山内さんのよく通る声が、予想以上に携帯から響いた。
「あ、はい。今着いた所で……」
変な汗をかきながら答える。
そして、繋がれた手が離された。
『よかった。沙耶ちゃん、方向音痴だって言ってたから心配してたんだ。そっちの地下鉄は複雑だろ?』
「あ、はい、そうですね……」
上の空で答えながら離れていった手の行き先を見る。