【完】甘いカラダ苦いココロ
「グラス、空だね。持ってくるよ。同じカクテルでいい?」
「あ、うん、ありがとう」
バーラウンジまで歩く彼を見送るでもなく見ていると。
すれ違う度、女の子達が振り返るのが分かる。
――座っていても。
彼は知り合いが多くて、男女問わず通りかかる度に声をかけられていた。女の子たちはみんな綺麗で、そんな女子からは値踏みされるような視線が痛いほど私に突き刺さる。
居たたまれない気持ち。そしてほのかな優越感。年に似合わない程スマートなエスコート。かなり女慣れしてるな……。そんな風に他人事のように彼を見つめる。私たちは余り多く語らず、見つめ合う時間が増えていた。
点滅する光
タバコの煙
流れ続ける音楽
甘いお酒と会話