【完】甘いカラダ苦いココロ
そこでの話題は花火。小さな線香花火から、大きな打ち上げ花火の話。浴衣の話。翔梧も持っててたまに着るらしい。
「ちょっとした知り合いの、呉服屋さんからもらったんだ。浴衣着るとさ、日本人の血を感じる」
冗談めかして言うけど、翔梧なら、間違いなく格好良いだろう。家の近くの神社で毎年ある夏祭りのこと。
「小さい時は家族で行ったけど、小学生ん時以来行ってないなぁ」
「そんなお祭り。全然知らなかった」
少し遠い目をして、呟く翔梧。私も小さな頃の翔梧を想像する。両親に手を引かれる小さな翔梧。
「花火も祭りもあんまり行ったことない。沙耶、今年は一緒に行こうな」
「うん。じゃあ、翔梧浴衣着てほしい! 私も着るから」
「俺、そういうとこ彼女と行くの、多分初めて」
すごく優しく、少し恥ずかしそうにそう言った。
「どーしよう。沙耶の浴衣姿、想像するだけで興奮する」
「もー! また、そう言うこと言う」
はしゃぐ彼が微笑ましくて笑ってしまう。