【完】甘いカラダ苦いココロ
そして終業式の昨日。
別れてから目も合わせようとしなかった春菜が、廊下ですれ違った時、何の気まぐれか俺に話しかけた。
「そう言えば、こないだ沙耶さん学校来てたわよ」
――心臓が、止まるかと思った。
ずっと抑えていた感情が動き出す。沙耶が来た!?
「なんで……」
掠れた声で答える俺を驚いたように見上げる。
「知らない。何か言いたそうだったけど。女たちに囲まれてる翔梧を見て、やめたみたいだったし」
鈍器で殴られたようなショック。今更だけど、沙耶には見られたくなかった。
「翔梧?」
「春奈……ありがと」
短く礼だけ言って駆け出した。沙耶の店へ――。