【完】甘いカラダ苦いココロ
「出発は、行き先を教えてくれませんか?」
余りに突っ込んだ質問に眉をひそめられるが知ったこっちゃない。俺の必死な形相に引いてるみたいだった。
「失礼ですが、志村とはどのような関係の方ですか?」
一番痛い突っ込みに黙り込む。
「佑香、ちょっと……」
「だって――」
ショートカットの店員に他の店員が声をかける。ユウカと呼ばれた店員は厳しい顔で俺を値踏みするように見つめた。どんな関係か、もうわからない。ただわかることがあるとすれば一つだけ。
「どんな関係か、正直わからないけど。話したいんです。大切な話なんです」
沙耶のメアドも番号も消してしまっていた。ここに賭けるしかなかった。どうあっても、会いたい。簡単に引き下がるわけにはいかなかった。
「教えてくれませんか?」
構わず重ねて訊ねる。そんな強硬な俺の態度に折れたのか溜め息をついた。
「今日、午後には出るって聞いてるけど……」
そして渋々行き先も教えてくれたんだ。
「沙耶、今いい人がいるの。泣かせたりしたら承知しないから……」
いい人。ズシンとのし掛かる、その言葉に改めて腹をくくる。俺はしっかりと目を合わせて頷いた。