【完】甘いカラダ苦いココロ
――彼氏の一人くらい出来てるだろう。そう、分かってるつもりだった。
けど、やっぱり、耐えられなかった。プライド? 独占欲? 言葉にすればそうだろう。それだけじゃなくて、今まで虚勢ばかり張ってきた自分の本音だった。沙耶を失いたくない……。身勝手な俺は男の存在に予想以上にショックを受けていた。
更に沙耶を傷つけることしか言えなくて。
キスした時も。これで最後。そう覚悟してた。
だから、沙耶がキレて、本当に動揺した。
「翔梧が……好きだから」
その言葉を耳に届いた時から、紛れもなく俺の世界には沙耶一色になった。
初めての恋に、俺はイカれてる。沙耶しか見えない。沙耶のことしか考えられない。
「重症だな……」
本当にヤバい。俺。こうしてまだ駅の改札をくぐれないでいる。まだ離れられない。沙耶に、伝えたいことがある。未熟な俺のガキっぽい言葉だとしても、後で悔やむのは絶対に嫌だから。しっかりと両足を地につけて、俺は立ち上がる。
――もう、逃げ道はいらない。