【完】甘いカラダ苦いココロ
――何で!?
「私っ。今日はちょっと先に帰るね」
慌てて荷物を掴んで階段を降りる。本社の持ちビルの吹き抜けエントランスには突然の雨に立ち往生してる人だかりが出来ていて、みんな困った様子で空を見上げていた。その中から聞こえた女の子たちの会話。
「すっごいカッコいいんだけど!」
「濡れちゃって可哀想〜」
「私、声かけてみようかな?」
――間違いない!
その脇をすり抜け外へ出る。
「翔梧っ」
すっかり濡れてしまってる彼に駆け寄った。
「あ、沙耶」
濡れて滴を垂らす髪。いつもより色を無くした唇。彼の周りを跳ね回る細かい水しぶきが光ってる。
眩しくて目を細めた本当に彼はどんな姿でも絵になってしまう。これ以上に誰にも見せたくなくて、手を引いてその場所から引き剥がす。
「こ、こっちに」
本社のビルの裏に小さな公園があった。木製のベンチに小さな屋根なんとか雨宿りくらいは出来るはず。
「ごめん。今メール読んだから……」
メールは翔梧からだった。
〈今会社の前にいる〉
驚いて外をみたら、雨に濡れて注目を集めてる彼がいた。