【完】甘いカラダ苦いココロ

 私を真っ直ぐに見つめる彼の視線を感じた。初めて送ってもらってから、何度泣き顔を見せてきただろう。
 
「顔をあげて沙耶ちゃん」

 山内さんの優しい声にぴくりと反応する。

「そんな顔させる為に告白したわけじゃないから」

 流れる涙をあわてて拭いながら顔をあげると、いつも以上の温かい慈しむ瞳にぶつかった。

「理由、聞いていいかな?」
 
 頷いて小さく息を吸う

「ずっと好きな人が、いて……」

 山内さんの目がきゅっと細められる。

「初めて送った時に会った、彼?」


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