【完】甘いカラダ苦いココロ
「え!?」
「なんか色っぽいし。いい事あった?」
初々しいカップル達が顔を寄せ合い幸せそうにショーケースのラブリングを見てる姿を眺めていたら、柄本(エモト)さんがからかうように声をかけてきた。このビルのアクセサリー売り場担当のチーフマネージャー。三十六歳の既婚者。いつも派手な柄のネクタイをしている。
「とうとう沙耶ちゃんにも春がきたか?」
「やめてくださいよ。何もないですから」
いつもの軽口を苦笑いで流す。