【完】甘いカラダ苦いココロ
ビルの外に出てそっと携帯を手に取る。
メールにしようか電話にしようか。考えるだけで心臓が早鐘を打った。
しばらく迷った末、呼び出した番号に発信した。
耳に響く呼び出し音がやたら大きく聞こえる。そしてそれ以上にカラダ中に響く心臓の音。
繰り返し続ける呼び出し音。なかなか出ない相手に少しずつ気持ちが落ち着いてくる。
――何か予定があるのかも。
電話の出られない状況なのかもしれない。
すぐ発信を切断する。そして同時に二人の間の見えない何かも途切れてしまったような寂しさを感じた。
さっきまでの浮き足だった気持ちが嘘のように沈んでいる自分がいる。
メールを打つ気になれず店に戻ろうかと携帯を鞄に入れた瞬間、鳴り出した着信音に驚いて足を止める。