【完】甘いカラダ苦いココロ
まずはお決まりの自己紹介。女子は私と佑香、あと二人は同じフロアの他店のアクセ子とその友達。まだ二人とも二十二歳らしい。
男性軍も四人。みんな同じ広告代理店の営業や企画を担当してる仲間らしい。世間にうとい私が知ってるくらい大手の会社。一番年上らしい人から、二十四〜二十九歳までの精鋭揃いと紹介された。
皆仕事帰りのスーツ姿だけど、髪型も自由だし、ノーネクタイの人が多かった。一番上のボタンははずしてラフに着こなしてる。
幹事で同僚の佑香は今、彼氏はいないけど好きな人はいたはずだ。最近、その人の好みに合わせて、ショートカットにしたばかり。自分の為の合コンとは思えない。
ーーこれってどういうこと!?
さっきからなんとか話をしたくて目を会わせようとしてるのに絶妙にそらされてる。
くじ引きでついた男女交互の席で小さくため息をついた。何となく隣の人と話ながら、冷めたピザに手を伸ばすと向かい側の男の人と手がぶつかる。
「あ、ごめん」
「ごめんなさい」
ほぼ同時に謝る。――えっと……確か。
「沙耶ちゃん。だったよね? 俺、柾人。山内 柾人(ヤマウチ マサト)」
記憶をたどろうとしていた私に丁寧にもう一度名前を教えてくれる。たしか年上だったはず。二十七歳とか言ってたかな。
「はい、どうぞ」
ピザを取り皿に乗せて渡してくれる。
「あ、ありがとうございます」
受け取りながら、慌ててお礼を言うと、微笑みながら、
「年上だけど敬語はいいよ」
と、さらりと付け加える。仕事以外だと少し人見知りする私だけど、違和感のない優しさだった。四人の中で唯一ネクタイを絞めている。
短めな髪を無造作にワックスで立てて、自然体なお洒落さでスーツを着こなしていた。