【完】甘いカラダ苦いココロ
「こら、沙耶ちゃんは俺が話してたんだぞ〜」
少しだけ話していた隣の人が割り込む。この人は確か一番年上の……。
「あ、木田(キダ)さんすいません。好みのタイプだったんで」
しれっと言い放つ。その言い方に全くのいやらしさをかんじなくて、
――えっ。
準備運動不足の心臓が驚いた。
「うわっ何それ!? 気をつけて。爽やかでイケメンだからうちの部署でも、女子にモテまくってるんだから」
「モテまくってたら彼女くらいいますって」
「そんな意外に硬派なとこがまた人気でさぁ……」
そんな感じでしばらく三人で話していたけど、それからは山内さんの方を余り見ることができなくなっていた。
隣の人と話していても視線を感じる。何もかも見透かされそうな、真っ直ぐな目。
「ほら、沙耶ちゃんに警戒されてるぞ!? お前正直すぎるから」
木田さんに笑いながら茶化されてますます頬が熱くなるのを感じて、お酒の場の一言一言に過剰に反応してる自分が恥ずかしくなる。
「あ、私、ちょっと失礼します」
逃げるようにトイレへと向かった。