【完】甘いカラダ苦いココロ

「あはは、そんなに警戒しなくでよ」

 座った瞬間、はじけるように笑いだす。そのからっとした笑顔には、人のココロを解きほぐす、何かがあった。

「別に、警戒してませんよ」

 図星を指されてまた赤くなる顔を見られないように残り少ないジョッキを傾ける。

「ガード固いなぁ」

 まだ可笑しそうに笑いながらドリンクメニューを取って私の前に置いてくれた。

「ソフトドリンクはこっち」

 メニューを指差す山内さんを見つめると、

「お酒、あんまり強くないんじゃない?」

「え……」
――なんでわかるんだろ。
 実はお酒はあまりカラダに合わなくて、飲み過ぎると呼吸が苦しくなることがある。いつも、自分でコントロールするようにしていた。
今日も、これで終わりにするつもりだったのだ。

「ありがとうございます……勘が、いいんですね」
 メニューを受け取りながら、思ったことをいってしまう。

「そう? まぁ、営業だしね。仕事柄かな?」

 そう言って笑ったけど、それだけじゃない。この人には嘘はつけない。そう感じさせる何かがあった。彼にはなんでも見透かされてしまうような気がして、目を逸らす。

 こういうタイプの人は苦手……。
 なんでも素直に話してしまいそうになるから。

 改めてココロのチャックを引き上げる。
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