【完】甘いカラダ苦いココロ
振り返るとさっきまで話していた山内さんが駆け寄って来ていた。
「送るよ」
返事をする前に隣に並ぶ。
「え、私は一人で大丈夫ですから……道も分かりますし」
「俺が心配だから」
断る私の言葉を遮る、有無を言わせぬあの笑顔。
「ここからだと暗い道もあるし。駅まで送らせて」
ここから駅までは私の足で歩いて十五分くらい。近くはない。途中確かに薄暗い道もあった。その柔和な笑顔の下の強引さに押しきられる。
「じゃあ……」
「いこっか」
歩き出す彼の横をゆっくり付いていく。歩幅がちょうどいい。合わせてくれてるんだ。と後から気づく。そのくらい自然だった。
「山内さんも背が高いですね」
「も?」
何気なく言った言葉だった。聞き返されてドキッとする。私、翔梧と比べてる……。
「185くらいかな? 沙耶ちゃんは小さいよね」
少し笑ってから、私の動揺に気付かない振りをしてくれる、大人な山内さん。