【完】甘いカラダ苦いココロ
夜の街は思ったより人が多かった。キャッチやナンパの多い道を通りながら気づく。そういえば、今日は金曜日なんだ。シフト制の接客業をしていると曜日感覚が無くなってくる。狭い路地を通ると人に軽くぶつかった。
「大丈夫?」
足元がふらついて、山内さんに寄りかかる形になる。
「あ、すいません」
「よかった、強引についてきて。こんな夜道一人で歩かせられない」
優しく肩を抱かれ、真剣に心配したようにそんなこと言われると、どうしたらいいかわからなくなってしまう。
「ありがとうございます。もう、大丈夫です……から」
「あっごめん」
気がついて、肩から慌てて手を離すその山内さんの顔にホッとする。
「じゃあ」
差し出された手を不思議に思って見ていると、大きな手が私の手を取った。