【完】甘いカラダ苦いココロ

 たしかに沙耶だった。知らない男といて、手まで繋いでた……。目に焼き付いた信じられない光景に頭が回らない。自分のことは棚に上げて、ぐるぐる嵐のようにココロの中で何かが暴れる。

「……悪いけど、帰るわ」

「なにそれ!? ちょっ、ショーゴ!?」

 後ろで怒り狂うRINAの声も自分の中の嵐で聞こえない。

 無心で向かうは沙耶のマンション。
 息を整えながらインターホンを押す。明かりもなく、物音もしない。主のいない部屋は静かに沈黙している。合鍵はもらっていなかった。今まで誰と付き合った時も合鍵を作ったことがない。

 それは俺の意思で、理由は縛られたくなかったから。だけど、沙耶からは一度も合鍵の話が出なかった事に今更気づく。無言で扉を睨みつけた。


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